浜松 賃貸の凄さ
正確にいえば、1990年代から強行してきた「雇用の不安定化による人件費削減策」を、「ワークシェアリング」という新たな装いのもとに、さらに強力に押し広げようとしている。
この似て非なる「ワークシェアリング」を、以下、「日本型ワークシェアリング」と呼ぶ。
かれらは、企業の「国際競争力」強化には3つの方法があるという。
第一は、他の追随を許さぬ高度な技術力をつけること、第2は、国際的な抜群のブランドカを有すること、第3は、コスト(人件費を大幅に削減することこの3点である。
だが、第一、第2の方法のためには、多大なカネ・チエ・時間を要する。
これにたいして第3の方法なら、恥知らずな「蛮勇」さえあれば足りる。
冷酷な解雇や賃下げをやる蛮勇さえあれば容易である。
そのため、日本企業のほとんどが、中長期的には第一、第2の方法を追求しているが、短期的・直接的対応としては第3の方法中心で「競争力」を強めようと狂奔している。
その新しい手法が、「日本型ワークシェアリング」にほかならない。
旧来の雇用・賃金・労働時間の制度・慣行等をまとめて一斉に破壊することにより、人件費の「地すべり的削減」をねらうものである。
かれらはデフレをその「追い風」として利用している。
また労働組合の多くは、それを阻止する勢力とはみられていない。
その「協力者」と堕した労働組合も残念ながら、めずらしくない。
そもそも「国際競争力」論なるものが怪しい。
イデオロギー攻撃の側面が大半だろう。
分析すれば根拠(種)のない「らっきょうの皮むき」に終わるケースが多い。
前述の「日本型ワークシェアリング」をフランスやドイツなどョーロッパのワークシェアリングと対比すると、その特徴が鮮明になる。
第一に、両者の「土俵」がまったく違う。
ヨーロッパのワークシェアリングは、一国レベルで考えられている。
つまり、労働時間法制の改正により(または全国版労働協約の変更により)、一国レベルで労働時間の短縮をおこない、雇用の維持・創出をはかる、というものである。
これにたいして、「日本型」は企業レベルで、正社員を非正社員に置き換えることで、雇用を「維持・創出」しようというもので、土俵がまったく違う。
ここから第2に、「日本型ワークシェアリング」の中心的なねらいが「雇用の不安定化による人件費の大幅削減」(賃金引き下げ)にあることが明らかだろう。
フランスなどのワークシェアリングは、賃金にたいして「中立的」である。
たしかに時間賃率は不変でも、労働時間が短くなれば「収入」(トータルの賃金額)は減る。
しかしこれも含めて、賃金にたいして「中立的」である。
いいかえれば「賃下げを前提」にしていないのである。
労資の力関係の結果として賃金が変動する、ということだ。
念のため、ドイツの場合は「原則は賃金カットなし」である。
フランスでも「賃金カットなし」が90%を占める。
よく「オランダ・モデル」が引き合いに出されるが、オランダではフルタイマーとパートタイマー間の賃金格差がほとんどないので、正規労働者のパート化でコスト・ダウンという日本財界の「夢」は果たせない。
結局、「日本型ワークシェアリング」は「ウエイジ・シェアリング」でしかない。
なぜなら、企業単位で正規労働者を減らしパートタイマーなど不正規労働者を増やし、大幅賃下げとセットの「数だけの一雇用の維持・創出」をおこなうものだからである。
そのことを日本経団連自身が明確に述べている。
「賃金分割をともなうワークシェアリングの考え方(たとえば一人分の賃金を2人の雇用者で分け合う発想)の導入や企業内における多様な雇用形態(長期雇用を前提とする基幹的社員、専門能力を活用する有期雇用契約社員、パート社員など)を一層適切に組み合わせること、さらに能力や成果・貢献度に応じた賃金配分の徹底をめざす方向で、総額人件費の引き下げを含め、その柔軟化を視野に入れることが望まれる」(99年版「労働問題研究委員会報告」)。
2002年版日経連「労働問題研究委員会報告」は、「ワークシェアリングはいろいろな捉え方が可能であるが、われわれはこれを雇用形態多様化の一環として位置づけ、第一に緊急避難型としての活用を考えると同時に、第2に中長期的な観点からの導入も検討すべきと考える」と述べている。
ここからも明らかなように、「日本型ワークシェアリング」は「雇用形態多様化の一環として位置づけられている。
そのうえで2種類がある、といっている。
第一は「緊急避難型」であるため、情勢が好転すれば、以前の状態(たとえば正社員)に戻すかのようにみえる。
しかし、「情勢の好転」とはその企業の「国際競争力」が満足できる水準に達することを意味するので、「戻す」などありえない。
なぜなら、国際競争はエンドレスだし、かりに「満足できる水準」に達したとしても、そのことを経営者はみとめたがらない。
結局、「緊急避難」といえども「片道切符」なのだ。
第2は、「中長期の観点」から、つまり時間をかけて、雇用形態の多様化・差別化を本格的におこなう、というものである。
「本格的」というのは、労働法制の規制緩和など国家をも動員した大々的な「不安定雇用創出戦略」であることを意味する。
いま正規労働者7割、非正規労働者3割であるが、この比率の逆転こそ、その「戦略目標」なのだ。
日本経団連から03年版「経営労働政策委員会報告」(以下「報告」と記す)が発表された。
これは02年まで日経連から「労働問題研究委員会報告」として出されていた文書を経団連が引き継いだもので、その性格・役割は旧来のものと基本的に同じとみてよい。
直接的には財界サイドの春闘方針書であり、さらには春闘にとどまらず財界の経営・労働面の基本戦略が示されている。
ここでは行論の必要上、「報告」の特徴的なところだけを指摘する。
この「報告」の最大の特徴は、「賃金春闘の終馬」を一方的に宣言し、「賃下げ当然」論をぶち上げていることだ。
その序文でO碩会長が「もはや賃金の社会的相場形成を意図する春闘は終蔦した。
個別企業労使の関心は、賃金水準や賃金の引き上げ幅のいかんでなく、自社の生き残りをかけ、雇用の維持に最大限の努力を払いつつ、いかに付加価値の高い働き方を引き出す人事・賃金制度を構築するかにある」と述べている。
「緊急対応型ワークシェアリング」だとして、くわえて注意すべきは、「賃金制度の改革による定期昇給の凍結・見直しも労使の話し合いの対象になりうる」として「定昇廃止」論も提起している。
説明を省くが、「定昇廃止」はズバリ賃下げを意味する。
こうして賃金体系改悪をふくむ「人事・賃金制度の抜本改革」が強調されていることを、しっかり指摘しておかねばならない。
「報告」で提起された賃下げのカラクリは巧妙で、前述のとおり一雇用・労働時間とからませた「3位一体」の攻撃となっている。
そのカラクリが「ワークシェアリング」という美名で隠蔽されていることも、前項で暴露したとおりである。
社会保障切り捨て攻撃など、他にも看過できない点が少なくないが、ここでは割愛せざるをえない。
「労働時間を短縮し、それに応じた賃金・賞与など総額人件費を削減することにより、雇用を維持する方法が講じられるべき」としている。
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